行方不明展に行ってきました【白田まもる×花見飯】
- kazarashiromeshi
- 2024年8月30日
- 読了時間: 5分
白田まもるです。
風鈴さんから「いい加減イラストの話をしろ」と言われたのですが、花見飯とデートに行っちゃったのでその話をしちゃおっかなと思います。

花見飯と行方不明展に行ってきました。

入ってすぐに、びっちりと貼られた壁が出迎えてくれます。
こんな出迎えは嫌だ選手権で優勝できそうです。

入場自体はあまり並ばずにサクッと入れたのですが、最初の展示から恐怖も情報量もかっ飛ばしすぎで、飯と一つひとつじっくりと見て回ります。
展示の中には、地区の防災無線によくあるような行方不明者情報の放送を延々と映すテレビもありました。重要なところが全然聞き取れない感じがとてもリアルです。わりと音がデカかったので、この展示から離れた後も放送の音が聞こえてきていて飯がずっと怖がっていました。

ちなみに私が一番不気味だった展示はこれです。

「記憶をたよりにイメージ画像をつくっている」と言いましても、こんなぐちゃぐちゃなつくりになるわけがなくない?
「あまり歯を見せては笑わない」のに、画像ではめちゃくちゃ大口開けて笑ってるし。
そんな全てにつじつまがあっていない感じが、絶妙に怖かったです。
飯はセロハンと紙の劣化具合にずっと言及していました。おもしれー女。
地下にも展示があって、ここは物などがメインで展示されていました。
わりとガチの曰くがついた鏡の前で写真を撮る女たち。

鏡の汚さが逆にエモさを出してくれていると信じています。
Z世代もよく顔面に謎の白い斑点が出るフィルターをかけて写真を撮っているじゃないですか。あれとほぼ一緒です。
私が一番印象に残っているのは、所在不明のフロアです。

説明が難しいのですが、直接的な命の危険をじんわりと感じました。
何があったかと言いますと、地面が不安定な感覚に襲われたんです。
隣にいた飯にずっと「地面がぐらぐらする」と訴えてはいたのですが、不思議そうな顔をされただけで終わりました。
後から考えてみると、飯の方が怖かったかもしれませんね。自分には起きていない感覚を隣にいる人間が強く訴えてきてるんですから。

そんな所在不明フロアにあった、デカい山の展示。
わずかに土のにおいがしました。むき出しの鉄骨の建物の中では絶対にするわけがない匂いで不気味だ―、という感覚です。
回っている間ずっと、2人で「リアルだねー」「ぞわぞわするねー」と言い合っていました。
ゆっくりじっくりと展示を見ながら、所々で考察をしながら、これは創作活動をする人間と一緒に行くとまた違った面白さがあるな~なんて思いながら、あっという間にすべての展示を回り終えました。
全体的な感想としては、すごく満足度が高い展示でした!
じわじわと襲ってくるホラーの作り方をしているからか、フラッシュ系の怖がらせ方は絶対にしてこないので、ホラーが苦手な私でも展示をまじまじと見つめられたのは嬉しかったです。
展示期間の最終日近かったのでたくさんの人がつめかけており、あまり集中しては見られなかったのがちょっと残念だったかなと思います。人が1フロアに3人ぐらいしかいない状態で、また飯と一緒に行きたいです。
個人的に衝撃だったのは、『行方不明』に希望を見出した人達の感情や行方不明になったその後にまで焦点を当てた展示をしていたところでした。
ちょっと考えればすぐにわかることではありましたが、そこまで考えが至らないほどに「ここから逃げ出したい」という気持ちが強くなってしまうとはどういうことなのか。もし行方不明になることに成功したとしたら、その時点で人は何を願うのだろうか。
私は消えたくないなー。
そんなことをぼんやり考えながら、真っ黒なカプセルトイを躊躇なく回す花見飯を見ていました。
カプセルの中からはくちゃくちゃに丸められた怪文書が出てきました。展示の中にあった張り紙でした。

「朝起きると目が腫れていたから、自分にとってよほどその子が大事な存在なんだったと思う」というような趣旨の一文が書かれていたものでした。表現の仕方が素敵で、記憶に強く残っています。
その後私はラジオ局に行く予定があったので、飯と一緒に近くのチェーン店に入り、温玉しか乗っていない少量のうどんを2人でかきこみました。
その店でお手洗いに入ったのですが、何と言いますか。
背が高めのゴミ箱から異常なほどにあふれた紙くずといい、黒ずんだタイル張りの壁といい、ふとした瞬間に光り方が鈍くなる天井の心もとない電球といい。どこかで見たことがあるこの感じ。
そうだ、これさっきまで見ていた行方不明展の展示そのものじゃないか。どこかのフロアに展示としてあってもおかしくない不気味さです。デジャヴです。
席に戻った時に思わず飯に「やべー、リアル行方不明展だわ」と報告してしまいました。
ここだけに限らず、東京ってすごいなと思いました。
東京は人が多い分、少しでも気を抜くと自分の存在が雑踏にかき消されてしまいそうになります。そして消えてしまったら、もう誰にも見つけてもらえず、それどころか消えたことすら認識されないんじゃないかという恐怖も感じました。それは他の人もおそらく感じていて、だからこそ足早に東京の土地を踏み固めているのではないかと思います。東京にいる間、消えそうで、消えまいと必死な横顔とたくさんすれ違いました。
東京で働く放送作家さんたちと直接お話しして、明確に「上京」という単語が自分の胸の中に座り込みました。その瞬間から、東京で見る景色がどうにも他人事のように、旅先の景色のように、思えなくなっていました。

こんな土地で将来、自分はやっていけるのだろうか。 渋谷のスクランブル交差点を見下ろしながら、とめていた足に少し力が入りました。
白田まもる

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